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戦車の装甲と、兵器の進化について

ちょっとした理由から、今回はちょっと毛色の違うお話など。
テーマは、戦車の装甲についてと、兵器の進化について。

第2次大戦の頃の戦車がわかり易いので、今回はそれを題材にお話しましょう。


まずは戦車の装甲について。
そもそも戦車の防御力っていうものは全体で均一ではなく、部位によってかなり異なっています。大まかに言うなら、前面は防御力が高く、側面や下面、上面や後面は低くなっています。
これは何故かと言うと。
大前提として、装甲材の強度が高ければ高いほど防御力は高くなり、更にそれが厚くなればなるほど防御力は上がります。
理想を言うなら、より強度の高い装甲材を使用し、なるべく厚い装甲で被えば防御力は上がる訳です。ですが、より強度の高い装甲材の開発はそうそうできるものではありませんので、主に装甲の厚さを増すことで防御力を稼ぐことになります。しかし、厚さを増せば増すほどに重量が増加し、重量の増加は機動力の低下や足回りの故障率の上昇に繋がってしまいます。その為、求める機動力から許容できる装甲重量がおのずと決まってしまいます。そこで、敵の攻撃を受け難い部位の装甲厚はなるべく薄くすることによって重量に余裕を作り、その重量分を攻撃を受け易い部分の装甲厚に廻すことによって防御力を向上させる努力が行われます。
このような理由から、先に言ったように部位毎の防御力の違いが出てくるのです。
今で言うところのMBT―主力戦車は敵主力戦車との戦闘を行う為に作られており、正面から撃ち合う事が多いので、その為前面装甲は敵主砲の攻撃を防御できるだけの防御力を求められます。結果前面装甲は厚くなり、攻撃を受け難い側面>後面という感じで薄くなっていく訳です。また、戦車戦は基本的に地面の上の2次元で展開される為、やはり上面装甲は薄くなっています。(戦車が航空戦力に極端に弱いのはこの為ですね。)
また、さまざまな装甲の種類によっても防御力の向上が図られていることは言うまでもありませんね。
というように、ある時点での最新鋭の主力戦車は前面からの攻撃に対してはほぼ絶対的な防御力を持たされています。
前面からの被弾でさえ防御できないようでは、主力戦車としては欠陥品なのです。
その為戦車戦においては、いかに相手の装甲の薄い部分を攻撃するか、つまりいかに相手の側面に回り込むかという戦いになります。
この、部位による防御力の違いってものは、重量との兼ね合いから現代でもその呪縛から解き放たれてはいません。
なるべく重量を軽く、なるべく防御力を高く、っていう試行錯誤と努力は現在でも続けられています。


次に、兵器の進化について。
「矛盾」ってお話は、おそらく知らない方はいらっしゃらないでしょう。
「どんな盾でも貫ける最強の矛」と、「どんな矛にも貫けない最強の盾」のお話です。
兵器開発は、まさにこの矛盾との戦いです。
言うまでもないことですが、矛は攻撃力を示し、盾は防御力を示します。
まず、敵はその最強の盾を持つと仮定します。(この段階では仮定で構わない)
※その盾を打ち破れなければ当然戦いに敗北します。
その為、その盾を貫ける最強の矛を求め、研究し、それを開発します。
しかし、自分達が作れた物です。やがていつかは敵もその最強の矛を手にするでしょう。
そうなると、今有る盾では身を守ることが出来ません。
そこで、その矛で貫くことが出来ない最強の盾が必要です。そしてそれを求め、研究し、それを開発します。
しかし、自分達が作れた物です。やがていつかは敵もその最強の盾を手にするでしょう。
※に戻る。以下繰り返し。
この繰り返しによって兵器は進化していきます。
第2次大戦当時の戦車の場合これは、矛の強化はより大口径の砲を搭載することでしたし、盾の強化はより厚く装甲を施すことでした。
現代に近付くにつれ、砲弾そのものの能力を変えたり、様々な概念、能力の装甲を開発していくことになります。
兵器には種別があり、求められる用途により枝分かれしていきます。まさしく生物の進化のように。
戦車っていう種別だけに限っても勿論それは当てはまり、第2次大戦時はシミュレーションではなく実際に戦場で戦闘を繰り返して進化していますので、調べて頂けるととてもわかり易いと思います。

コメント (2)

るふぁーる:

今回は、また一味変わった話で楽しませていただきました。

技術進歩がもっとも著しいのは戦時中の兵器開発だという話をどこかで聞いた事があります。
ことほどさように人間の業と言うのは深いなぁと思いますね。
願わくば、戦争のためでない方向で技術進歩が著しいと嬉しいんですがねぇ。

でわでわ。

私みたいに昔から軍事関係に興味があって、その手の本を読み、それについて考えてみたことがある人にとってみれば、今回書いたことってのはある意味基本中の基本なんですよね。
兵器なんて無駄があると困るものの場合、その性能や形態は求められて開発されていると考えるべきで、ただ「こんなのができました」ではないと考えるべきなのです。
ガンダムのような空想世界(に限らないのですが)、その中でも特に兵器関係の分析をするなら、この基本はわかっていないと話にならなかったりはするのですよね。
勿論わかっていなくても物語を楽しむことはできます。
しかし、そういう基本を知らないのにそういう部分を思い込みだけで批判する人も後を絶たない訳で。
そういう状況をただ笑って眺めていてもいいのかもしれませんが、でもそういう方に少しでも基本を知っておいてもらいたくて、ついこんな記事を書いてしまいました。
というか、批判してる方がまさかこれを知らないとは夢にも思っていなかったのですが(^^;
―まぁ他でそんなことがあったのです(笑)

でもこの一件で気がついたのが、逆にいうと、そういうのに興味が無かった方々は当然こういうことをご存知であるはずが無い訳で。
ならば、こういうことを知って頂くのも、戦闘兵器を扱う作品を更に楽しんでもらう足しになるのでは?と思ったのがこのブログに記事としてアップしてみた理由でもあります。
そういう訳で、なるべくシンプルに解り易く書くことに努めました。


戦時中の兵器開発が技術進歩著しいと言われる理由は幾つかありますね。
それが必要に迫られて開発されていること、シミュレーションではなく実際の運用で完成度が高まっていること、予算が集中的に投入されやすいこと―。
ざっと挙げてもこんな感じです。
ですが、これはあくまで軍事に関わる事のみの話で、逆にその他の分野についてはやはり戦時中は進歩は遅くなります。
予算が軍事方面に取られて減らされたり、その分野のエキスパートが徴兵に取られたり死亡してしまったり、関連施設が徴用されたり破壊されたり―。
特に人的損害、文化的損害はバカになりません。
その戦争で亡くなった方々がもし生きていれば、もっと沢山の何かが成せていた筈なのですから。
戦争によって技術進歩があったとしてもそれを民間レベルにスピンオフできるのはやはり戦後ですし、それを成し遂げられるのは、戦争を生き抜いた人々が復興を目指して努力なさったからに他なりません。

とは言っても、平和な時には平和な時で、大切な技術は評価されずに予算が出なかったり計画が打ち切られたりするんですけどね。
国産固体燃料ロケットのミューシリーズみたいに(TT

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2007年10月17日 08:18に投稿されたエントリーのページです。

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