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モビルスーツの脚の応用・その2

今回はモビルスーツの脚部の宇宙空間における運動性能の向上について考えてみます。
なお、ここでの運動性とは現用兵器に則り機体そのものを素早く移動させる為の能力のことであり、MSの人型ゆえの動作そのもののことではありません。

宇宙空間におけるモビルスーツの脚部の存在意義を見出す為に考えだされたのがAMBACであり、それは宇宙空間での運動性向上に役立ったというものでしたが、先のエントリーでそれを否定してしまいました。
では宇宙空間でモビルスーツの脚部はデッドウェイトであり白兵戦闘にしか役立たなかったのかというと、必ずしもその限りではないと考えられます。

脚部の運動性能向上への利用方法として私は今のところ2つあったと考えています。

まず1つは、その脚部の質量を利用した重心移動です。
これまでアップしたザクの絵を見ていただいてもわかりますが、モビルスーツの脚部は機体全体からみて結構な割合を占める部位です。
前回のエントリー「モビルスーツの脚の応用・その1」で書いたように、モビルスーツの脚部はかなりの強靭さと重装甲を兼ね備えています。当然その重量も機体全体から考えて相応の割合を占めているものと思われます。
ということは、この脚部を動かすだけでモビルスーツの重心位置は大きく移動することになります。
空力を無視した場合、モビルスーツに限らず推力によって飛翔する機体は機体重心が推力方向線上にあるということになります。
モビルスーツの場合は、メインスラスターと補助スラスターの複合によってこの推力方向線を機体重心上に維持していると考えるのが妥当と思われます。
この推力方向線から機体重心がズレるとそのズレた方向へ機体が回転を始めてしまいます。
複数のスラスターによる複合だとするとそれぞれのスラスターの出力を調整したり、推力偏向ノズルを使用することによって推力方向を変更することも可能ですが、機体の重心を故意に移動させることによって同じ現象を起こすことも可能となります。
両方を複合して利用することにより、より高い旋回能力を発揮させることも可能と思われます。
これは、推力方向の変更や、姿勢制御スラスターによる機体方向の変更のみに依存せざるを得ない機体よりも運動性能面において有利と言えるのではないでしょうか。
また、装備しているスラスターの中でも、より大出力のスラスターを有効に使用できるように重心位置を移動させるテクニックなどもあったと考えると面白いかもしれませんね。

2つめは、脚部にスラスターを搭載することによって、先の推力方向線を変更したり、姿勢制御スラスターとして利用するものです。
8/29のエントリー「AMBACについて」のコメント欄で少し話しているのでそちらも参照してみていただけるとありがたいのですが、姿勢制御スラスターは機体重心よりなるべく離れた位置に配置されている方がより効果的です。これはグリプス戦役の時代にはスタビライザーとして積極的に取り入れられていくことになります。
また、機体質量で脚部の占める割合が大きいので、脚部にスラスターを搭載するのは推力方向線を機体重心に乗せる上では有利でもあります。特にジオン系の機体、ザクではR型と呼ばれる高機動型では姿勢制御スラスターの機能と複合してより積極的に利用されていったと考えることができます。


ザクの背面を整理してみました。
設定画からみるとランドセルはこれくらいのサイズだと思うのですが、大き過ぎでしょうか?
ところで設定画ではザクのランドセルのディテールはこの程度しかない訳ですが、皆さんはメインスラスターはどこにあると思っていらっしゃいますでしょうか?

コメント (4)

匿名:

蒸し返しになりますがAMBACを是とした時、上でおっしゃっていた重心移動の技術は積極的に使うだろうと考えていた事があります。人型の必要性も含めて次の様な考え方は文系SF的にどう?とかw。

より速く走るためには走法、泳ぐためには泳法といった様に身体をより効率的に使う技術というものは存在します。
時は宇宙世紀、人が宇宙に出る以上、当然宇宙遊泳の技術も確立されていると考えられます。例えば作業中に誤って空間に放り出されてしまった時、いち早く姿勢を安定させ、より少ないエネルギー(質量の放出)で、目標に到達(帰還)する為の技術です。仮にMSが人の形をしている理由が人に出来る事を全て可能にする為であるとしたなら、当然この技術のトレースも可能であり、設計もこれを前提にされていると考えることが出来ます。推進器を1つに絞る事が可能となり、よりコンパクトな機体にする事が出来ます。

センチュリーではAMBACはMSの為に開発された技術という事になってましたが、それならもっと他に効率が良い方法を選ぶはず。なら、既存の確立された技術を使う為のシステムではないかという思い付きで考えたものです。旧TVシリーズでは姿勢制御の為のスラスターの表現が殆ど無いのと、人型の理由を僕なりに検討した結果見えてきた物です。

もちろん、この考え方にも突っ込み所は在ります。
そもそも、すでに確立された技術であるなら「能動的質量移動による自動姿勢制御」なんて名前は付けない、イグルーでやっていた宇宙で溺れるという事態は起こらない、TV画面でやっていた様な高速運動は出来そうにない、等です。アプローチを変えて考えたりもしてるんですが僕にはAMBACを肯定出来るだけの理屈はまだ見つかってません。

あと、ランドセルのバーニアの件ですが、僕は旧ザクと同じ所に穴を開けました。焼いた目打ちでw。

新庄聡美:

>匿名さん
とても面白い発想だと思います。
ただ問題になるのが、結局のところ移動や回転等の運動エネルギーはそれに釣り合うエネルギーを与えてやらないと相殺することができないということでしょうか。
また、これもご意見に否定的なものになってしまうのですけれども、面白いことにノーマルスーツを着て無重力地帯に出る際にはちゃんとバックパックに推進器を装着して出るんですよね。
そう考えると、推進器が必要で無い技術というものが確立されている可能性は限りなく低いのかなと思えます。
1st最終話のアムロとシャアの撃ち合いなどを見る限り、少なくとも戦闘時には推進器を利用した方が有効、ということになる気がします。

匿名:

宇宙世紀の宇宙服には推進器は付いている物と僕も考えているので、あくまで姿勢制御の為の技術と思っています。
あと、これは昔から気になってたんですが、ノーマルスーツのバックパックなんですが、連邦の物はノズルがたくさん付いていて姿勢制御もこれで行うのであろうと思わせるのですが、対してジオンの物はどうにも前に進むだけの物にしか見えません。「これはAMBACはジオン独自の技術であり連邦にはその技術がない為この差が出たのだ、この思想はMSにも影響を及ぼしている!(厨二くさいw)」とか高校生の頃は考えてましたw。何を根拠にそう考えたのか今にしてみれば不明ですが、ジオンはAMBAC、連邦はスラスターというイメージでした。Zの印象も入ってたんでしょうかねぇw。与太話になってすみません。

新庄聡美:

私の遥か昔…おそらく1st放送直後から80年代の記憶なのですが。
ジオンのノーマルスーツ用スラスターは、ノズルは1基ですが方向が自由に可動すると何かの本で読んだ記憶があります。
対して連邦のは固定式でスラスターノズルが四方に向いていて、必要な方向のを使用する訳ですね。
これはジオンの方が宇宙関連技術に一日の長がある為との解説だったと微かな記憶があるのですが、つまりジオンの方が可動式スラスターの技術が発達していると私はそう解釈して納得しておりました。
つまり連邦は固定式スラスター、ジオンは可動式スラスターということですね。
私はこの差は十分理解もできるし面白いものだと思っていましたし、実は1stからのガンダムファンの間では共通認識だと思い込んでおりました(^^;
というわけで、こういう解釈ではいかがでしょうか?

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2011年09月01日 18:26に投稿されたエントリーのページです。

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